羅生門について

羅生門は
地質上の奇現象

 羅生門は、第1門から第4門までの4つの天然橋からなり、最も奥に鍾乳洞があります。第1門の高さは38m、幅が17mあり、昭和5(1930)年8月25日に国の天然記念物に指定されています。1929年前後に文部省が行った全国的な天然記念物調査でその特異性が評価されました。
 公開されている文化庁データベースには羅生門の指定説明が次のように記録されています。

「秩父層石灰岩中ニ於ケル石灰洞ノ天井ノ一部崩落セルニ依リテ生ジタル天然石門ニシテ大小四個アリ互ニ相接シ石灰岩ノ侵蝕ニ基ケル地貭上ノ奇現象ナリ石門列ノ一端ニ奥行九〇メートルノ石灰洞窟アリ」

これを、現代語訳すると

秩父層の石灰岩の中にある石灰洞(鍾乳洞)の天井が 一部崩落したことによって生じた天然の石門であり 大小4個が互いに連続している 石灰岩の侵食に基づく地質上の奇現象である 石門列の一端には奥行約90メートルの洞窟がある

つまり、羅生門 が昭和5年に天然記念物に指定された理由は、

  • 形成過程が明確鍾乳洞の天井崩落)
  • 極めて珍しい石門が4つ連続している
  • 学術価値がある(地質上の奇現象)

これらをまとめると、羅生門は「なぜできたかが明確で、かつ珍しい」ということが理由で、観光地としてではなく、“地質標本”として指定されています。

参考資料:
国指定文化財等データベース
文化遺産オンライン

第2門から振り返ると第1門が見え、石門が連続しているのが分かります
第2門と4門
第3門

新旧がひとつに
―羅生門第一洞

 第4門の奥、いちばん低い場所に「羅生門第一洞」の吸込み口があります。羅生門第2展望台から見ることができます。この穴に、地上に降った雨やまわりの水が地下の奥へと流れ込んでいます。その水は、高梁川の支流である佐伏川へつながっていると考えられています。
 第一洞の入口からは、いつもひんやりした冷たい空気が出ています。冬になると、この冷たい空気は洞窟の中へ入り込み、石や水を冷やします。そして夏になると、その冷たい空気が外へ出て、第4門から第1門へ続くくぼ地の下にたまります。そのため、このあたりは周りの台地の上よりもずっと涼しくなり、他では見られないコケが育つ理由になっています。
 こういったことから羅生門は、「昔の洞窟」と「今も水が流れている洞窟」がひとつになって見られる、とてもめずらしい場所なのです。

羅生門第一洞の吸込み穴(入洞禁止)

修験道修業の地―
この世と異界の境界

 日本では古くから「磐座(いわくら)」と呼ばれる巨岩信仰がありました。岩場や断崖は、人が簡単に近づけない“境界”の象徴。山や岩は神や霊が宿る場所と考えられてきました。

 羅生門には、修験道の開祖である役小角(えんのおづぬ)=役行者(えんのぎょうじゃ)の石像があります(一般公開していません)。市教育委員会の調査によると、安永7(1778)年ころのものとされています。その周辺に寝泊まりしていたであろう場所も見つかっていることから、修行者が羅生門の厳しい岩場で行に励んでたのでしょうか。
 羅生門に石像がある理由として、修験道では、岩場や断崖は「日常世界」と「神仏の世界」の間とされ、修行の場として最もふさわしいと考えていたからです。岩場は滑落や転落の危険があり、常に「死」と隣り合わせ。修験者はあえてその環境に身を置くことで、恐怖を乗り越え、生と死を見つめ、執着を手放すといった精神的な覚醒を目指しました。

役小角の石像

 岩場の上には、不動明王の小さな石像が置かれています。不動明王は、もともと密教(真言宗や天台宗)で大切にされてきた仏さまです。平安時代ごろからは、災いを防いだり、病気を治したり、願いごとをかなえてくれる存在として、多くの人に信仰されるようになりました。

 山で修行をする修験道においても、不動明王は特に重要な存在です。不動明王は、人の心にある迷いや恐れといった「気持ちのゆらぎ」を断ち切り、修行の邪魔になるものを取り除いてくれると考えられてきました。そのため修験者たちは、このような厳しい岩場に像を置き、その前で祈りをささげながら修行を行っていたと考えられます。

※不動明王の石像は羅生門ガイドツアーでご案内します。

羅生門「野の花」紀行

 羅生門周辺は、国の天然記念物に指定されたエリアで、植物の採取は原則として禁止です。
国の天然記念物は、文化財保護法 によって守られています。草花を摘む、木の枝を折る、種子やコケを持ち帰るなどの行為は行わないでください。また、羅生門をまもる会は、自治体の許可を事前に取得したうえで、保全目的の管理作業を行っています。

ヤマトレンギョウ 石灰岩地域特有

 阿哲台や帝釈峡(広島県)などの地方の一部にのみ分布する日本固有種です。他の植物が育ちにくいアルカリ性の強い石灰岩地帯をあえて選ぶことで、生存競争を避けて生き延びてきたと考えられています。非常に限られた場所にしか自生していないため、環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類 (VU) に指定されています。花期/3月下旬

チョウジガマズミ

 非常に限定されたエリアにのみ分布している植物です。高梁市出身の植物研究家・吉野善介により新見市で自生が確認されました。チョウジガマズミは、氷河期に大陸から日本に渡ってきて、温暖になった現在でも特定の環境にだけ生き残っているもので「大陸系遺存植物」と呼ばれます。非常に強い芳香を持っており、開花期には周囲に甘い香りが漂います。花期/4月上旬~

カタクリ

 カタクリは芽生えても花を咲かせることができません。葉で光合成をし、できたわずかな栄養分を貯めては枯れる。毎年それを繰り返し、10年近くもかけてやっと一輪の花を咲かせます。花期/3月下旬~

ユキワリイチゲ

 早春、まだ寒さの残る林床に咲く可憐な山野草です。花が雪を割るように顔を出すことから「雪割一華」と呼ばれています。花期/3月下旬~

シュンラン

春の山林にひっそりと花を咲かせる、日本を代表する野生ランのひとつです。落ち着いた緑色の花姿は控えめながら、古くから親しまれてきました。花期/4月初旬

コチャメルソウ

 早春の湿った遊歩道沿いで、小さな花を咲かせる可憐な山野草です。花の形が楽器の「チャルメラ」に似ていることから、この名が付けられました。花期/3月中旬~

ギンリョウソウ

 木陰の枯葉の中に生える腐生植物。葉緑素を持たないので、光合成を行わず菌類から栄養をもらい生育します。別名ユウレイタケ。花期/4月中旬

トリガタハンショウヅル

 最初の発見地は、日本屈指の石灰岩採掘場である高知県の「鳥形山(とりがたやま)」に由来しています。日本固有のキンポウゲ科のつる植物。花期/4月中旬

イチリンソウ

 春、遊歩道沿いのやや湿りけのあるところに咲きます。1本の茎の先に大きな白い花を一輪咲かせますが、まれに二輪咲くことがあります。花期/4月上旬~

ヤマルリソウ

 斜面に瑠璃色の小さな花を咲かせる可憐な山野草です。足元にひっそり咲く鮮やかな青色が、森の中でよく映えます。花期/4月上旬~

ホタルカズラ

 咲き始めは紫みを帯び、次第に深い青に花色が変化し、花の中央には白い星のような模様があります。花期/4月上旬~

ウワミズザクラ

 春にブラシのような白い花をたくさん咲かせる、野山のサクラの仲間です。古くは若い実を塩漬けにして食べる風習もあり、人々の暮らしと関わってきました。花期/4月上旬~

ウグイスカグラ

 春に淡い紅色の小さな花を咲かせ、初夏には赤い実をつけます。ウグイスが鳴く頃に花を咲かせることから、「ウグイスカグラ」と呼ばれています。花期/4月上旬~

ツクバネウツギ

 春に淡い黄白色の花を咲かせる低木。花の内側に黄色の網目状の模様があります。花は枝先に2個ずつ対につきます。花期/4月上中旬~

サイハイラン

 初夏、紫色を帯びた細長い花を垂れ下げるランの仲間です。花姿が戦で使う「采配(さいはい)」に似ていることから、この名が付けられました。花期/6月上旬~

ギンバイソウ

 湿度の多い木陰に咲きます。梅のような白い花が咲くことからギンバイソウ(銀梅草)と名付けられたそう。花期/6月中旬~

ハグロソウ

少し湿った木陰で見られる、小さな野草です。「目立たないけれど、見つけるとうれしい植物」の一つ。花期/7月中旬~

スズムシバナ

 夏の終わりから秋に、淡い紫色の花を咲かせる山野草です。名前は、花の咲く頃に響くスズムシの声にちなむといわれています。花期/9月初旬~

キバナアキギリ

 秋の山野に鮮やかな黄色の花を咲かせる、シソ科の野草です。細長い花の形が特徴で、木漏れ日の中でひときわ目を引きます。花期/9月中旬~

ジンジソウ

秋になると白い花を咲かせる山野草。花の形が「人」の字に見えることから、「人字草(ジンジソウ)」と名付けられました。花期/9月下旬~